
私たちはHata-Raku・GuestNote・Shif-Match・LocaNoteという4つの自社開発SaaSを、名古屋・金山のラーメン店「熊猫商店」で実際に使いながら育てています。4つを並べて見直したとき、ひとつ気づいたことがありました。どのサービスでも、「AIに任せる範囲」と「人が確認する範囲」の線引きが、同じ考え方で引かれていたのです。
下書きはAI、確定は人
Shif-Matchは、スタッフの希望からAIが半月分のシフトを下書きします。ただし画面に入るだけで保存はされず、店長が内容を確かめて「まとめて保存」を押したものだけが確定します。GuestNoteも同じ形です。来店アンケートの回答からAIが感想文を下書きしますが、そのまま投稿されることはありません。お客様ご自身が文章を確かめ、必要なら手直ししてから、Googleマップの口コミ欄に貼り付けます。LocaNoteでも、AIが用意した投稿文や口コミの返信案は、承認するまで外部には出ません。
一方、Hata-Rakuの勤怠集計や概算人件費には、AIの下書きという仕組みはありません。打刻の記録と平均時給から、決まった計算式で集計するだけです。そこにはそもそも「判断」が入らないので、確認してもらう相手も必要ないのです。
線引きの基準は「取り消せるか」と「誰の目に触れるか」
4つを並べて気づいたのは、AIに下書きをさせるかどうかは、作業の難しさではなく「取り消せるか」「社外の誰かの目に触れるか」で決まっていることでした。シフトや口コミの返信、投稿文は、一度外に出ると簡単には取り消せません。だからこそ、下書きの段階と確定の段階を分け、確定する前にもう一度人の目を通しています。逆に、勤怠集計のような計算は、間違っていればすぐにやり直せますし、社外に出るものでもありません。判断そのものを機械に預けても困らないのは、そういう性質の作業だからです。
この線の引き方は、自社のサービスを作るときだけでなく、日々の業務でAIを使うときにも使える考え方だと思っています。
熊猫商店で最初に決めた、小さなルール
熊猫商店でLocaNoteの実地検証を始めたとき、最初の数週間は「AIが用意した投稿文は、全件を目で確認してから承認する」というルールだけを決めました。件数が少ないうちは手間に感じませんし、AIがどんな文章を書くのか、どこを直したくなるのかが、この期間でよく分かります。そのうえで、間違えても取り消しやすい投稿から確認の頻度を落とす、という順番で運用を広げています。最初から全部を自動にせず、取り消しにくいものから手を離す順番を決めておくと、現場も落ち着いてAIに任せられるようになります。
これから社内の業務にAIを取り入れる場面でも、任せる前に「取り消せるか」「誰の目に触れるか」を一度問うてみると、どこまで任せてよいかの判断がしやすくなるはずです。