
私たちは名古屋・金山でラーメン店「熊猫商店」を自社運営しています。新しいやり方やITツールをお客様に提案する前に、まず自分たちの店で試すようにしています。今回は、その実証の中でつまずいて学んだ「記録の取り方」についての話です。
「よくなった気がする」で終わらせないために
熊猫商店では、オペレーションの変更や新しい運用を試すとき、終わった後に「どうでしたか」と現場に感想を聞くことがあります。ただ、感想だけだと「よくなった気がする」「前より楽になった」という印象の話で終わってしまい、本当に効果があったのか、次に別の店舗や別のお客様に勧めてよいものなのかを判断する材料になりません。
私たちが実証を重ねる中で気づいたのは、効果を確かめようとして慌てて記録を取り始めるのは、すでに手遅れだということです。試した後に数字を振り返ろうとしても、変更前の状態を正確に覚えている人はいません。比較する相手がなければ、「よくなった」かどうかは誰にも判定できないのです。
試す前に決めておくこと
そこで私たちは、実証を始める前の段取りを変えました。新しい運用を試す日の前に、最低限次の3つを決めておくようにしています。
- 何を記録するか(例: ある作業にかかった時間、ある時間帯の人の配置、お客様からの声が出た件数など)
- いつ・誰が記録するか(担当を決めないと、忙しい時間帯は記録が抜けます)
- 変更前の状態を、変更後と同じ形式で先に取っておく
特に3つ目が抜けやすいところです。変更後だけ丁寧に記録して、変更前は「だいたいこんな感じだった」という記憶だよりになっているケースを、私たち自身の実証でも何度か経験しました。そうなると比較のしようがなく、せっかくの実証が「試してみた」という体験談で終わってしまいます。
比較のための前提をそろえる
もう一つ大切にしているのは、比較する条件をできるだけそろえることです。曜日や時間帯、客数が大きく違う日を比べても、変化の原因が運用の変更なのか、たまたまその日の状況が違ったのかが分からなくなります。熊猫商店のように客数の波がある店では、同じ曜日・同じ時間帯のデータを変更前後で並べるようにしています。
完全に条件をそろえることは難しくても、「何が違う可能性があるか」を記録の時点で意識しておくと、後から振り返るときに「この差は運用のせいではなく、この日は雨で客数が少なかったからだ」といった判断ができます。記録は数字そのものだけでなく、その日の状況のメモも含めてセットだと考えています。
小さな実証だからこそ、記録を怠らない
実証は、大きな投資をする前の小さな一歩であることが多いはずです。だからこそ、「小さいからきちんと記録しなくてもいいだろう」と思ってしまいがちですが、むしろ逆だと感じています。小さな実証の結果を次の判断の材料にするなら、その記録が唯一の根拠になるからです。
私たちはこの経験を、店舗の現場でDXを進めるお客様への研修でもお伝えしています。ツールを導入すること自体はゴールではなく、「本当に効果があったのか」を自分たちの言葉と数字で説明できるようになることが、現場が自信を持って次の一歩を決める力になると考えています。研修の内容はDX・AI研修のページでもご紹介していますので、ご興味があればご覧ください。
熊猫商店での実証も、まだ試行錯誤の途中です。これからも、試す前の準備も含めて、実際に手を動かした中で分かったことをこの場でお伝えしていきます。