
IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)の相談を受けるとき、私たちが最初に聞くのは「いくら使えるツールですか」ではなく「今、その代金を全額立て替えられますか」という質問です。採択されるかどうかの前に、この問いに答えられないと、話が先に進められないからです。
補助金は「先払い・後精算」です
この補助金は、事業者が代金を全額支払った後に、実績報告を提出し、国の確認が終わってから補助金が交付される仕組みになっています。申請して採択が決まれば、すぐにお金が入ってくるわけではありません。
おおまかな流れは次のとおりです。
- 申請 → 交付決定(締切から1〜1.5ヶ月程度)
- ツールの契約・導入・全額の支払い(ここは完全に自己資金です)
- 実績報告の提出
- 確定検査(提出から1〜2ヶ月程度)
- 補助金額の確定 → 入金(確定から1ヶ月程度)
つまり、発注から入金まで数ヶ月単位の立て替え期間が発生します。補助率が3/4や4/5であっても、その期間は全額を自社の資金で持ち続ける必要があります。ここを見落として「補助金が出るから」と導入を決めてしまうと、入金までの間の資金繰りが苦しくなる場面を実際に見てきました。
支払い方法にも条件があります
もう一つ、申請前に確認しておきたいのが支払い方法です。
- 銀行振込、またはクレジットカードの一括払いが原則です
- 現金での支払いは、金融機関の窓口やATMを使った場合でも認められません
- 分割払い・リボ払いも対象外です
- 銀行振込の支払元口座は、補助事業者本人の口座である必要があります
- クレジットカードは代表者本人名義に限られ、家族名義や第三者名義のカードでの支払いは対象外になります
さらに、交付決定より前に発注・契約・支払いをしてしまうと、その時点でその取引は補助対象から外れます。「見積が決まったから先に契約だけ進めておこう」という判断が、結果的に補助金を受け取れない理由になることがあります。順番を間違えないことが、金額の大きさよりも重要です。
申請前にチェックしておきたいこと
私たちが社内でツールを導入するときも、必ず次の3点を先に確認しています。
- 立て替え期間中の資金が、他の支払い(給与・仕入れなど)を圧迫しないか。数ヶ月分の金額を別枠で見ておけるか
- 支払いに使う口座・カードが、補助事業者本人の名義になっているか。法人なら法人口座、個人事業主なら屋号名義ではなく代表者名義で揃っているか
- 交付決定の通知が来るまで、発注・契約・支払いに一切手をつけない体制になっているか。現場の担当者まで含めて共有できているか
この3点は、どの申請枠でも共通して確認できる内容です。補助金額の大きさや採択率の高さに気を取られがちですが、実際に導入を進める段になって困るのは、たいていこの資金と手続きの順番の部分です。
デジタル化・AI導入補助金は、現在6次締切が本日10月30日、次の7次締切が12月1日の予定です。次回に向けて検討している場合も、申請書を書き始める前に、まずは「立て替えられる体力があるか」「支払いの名義は揃っているか」を社内で確認しておくことをお勧めします。