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AI研修が定着するかは、最初に教える1人で決まる

AI研修が定着するかは、最初に教える1人で決まる

AI研修を実施したあと、よくいただく質問があります。「研修をやったのに、現場で使われない」というものです。

私たちはAI研修・リスキリングを事業として行う一方で、名古屋・金山でラーメン店「熊猫商店」を自社運営し、スタッフにAIを実際に使ってもらう立場でもあります。その両方の現場で見えてきたのは、定着するかどうかは研修の内容そのものより、研修後に最初に使う1人を誰にするかで大きく変わるということでした。

全員に同じタイミングで広めようとすると、止まる

研修直後は、参加した全員が「使ってみよう」という気持ちになっています。ところが翌週になると、使う人と使わない人にはっきり分かれます。これは意欲の差というより、最初の壁に当たったときに聞ける相手がいるかどうかの差です。

全員が同じタイミングで使い始めると、全員が同じタイミングで同じ壁に当たります。誰も答えを持っていないので、そこで止まります。私たちが研修を設計するときに重視しているのは、全員に一度に広めるのではなく、最初に使う人を意図的に1人か2人に絞ることです。

最初に教えるのは、役職が高い人ではない

ここで選び方を間違えやすいのが、店長やリーダーに最初に教えようとすることです。役職が高い人に広めてもらうのが筋が通っているように見えますが、現場ではうまくいかないことが多いと感じています。

理由は、店長やリーダーは教える立場としての言葉で説明してしまうからです。「業務効率化のために導入します」という言い方は、現場のスタッフにはあまり刺さりません。

私たちが最初に教える相手として選んでいるのは、役職ではなく「新しいことに興味を持ちやすい人」です。熊猫商店でも、AIを使ったメニュー説明文づくりに最初に飛び込んだのはキッチンスタッフの1人でした。その人が自分の言葉で「これ使うと楽になるよ」と隣のスタッフに話したことで、少しずつ広がっていきました。上から説明された内容より、同じ立場の人から聞いた一言のほうが、現場では信じてもらえます。

共有の場は、会議ではなく「隙間時間」に置く

広がり方を見ていると、朝礼や月次の会議で「AI活用報告」の時間を設けても、定着にはあまり効いていませんでした。改まった場では、うまくいった話しか出てこないからです。実際に現場で役立つのは、失敗や「これはうまく動かなかった」という話のほうです。

効いていたのは、休憩時間やシフトの合間に、使った人が自然に見せ合う場面でした。研修側としてできることは、この隙間時間での会話が起きやすいように、最初の数週間は「聞かれたらすぐ答えられる人」を現場に置いておくことだと考えています。研修を外部に依頼する場合も、研修当日だけでなく、翌週・翌々週に短い振り返りの機会を入れておくと、この隙間時間の会話が途切れずに済みます。

使われているかどうかは、人数ではなく「誰が使っているか」で見る

研修後の定着を確認するとき、「何人が使っているか」という人数だけを見てしまうと、実際の広がり方を見誤ります。大事なのは、最初に使い始めた人から、どこまで隣に伝わっているかという伝播の形です。

最初の1人が孤立したまま使い続けているだけなら、それは定着ではなく個人のスキルにとどまっています。隣のスタッフが「あの人がやっているなら自分も」と言い出した時点で、初めて現場に根づいたと言えると私たちは考えています。

研修を企画する立場からは、研修直後の満足度よりも、1ヶ月後に誰が誰から教わったかを追いかけることのほうが、定着を測る手がかりになっています。もしこれから研修を計画される場合は、最初に教える1人を誰にするかから考えてみることをお勧めします。

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