
私たちはお客様にITツールの導入をご提案するとき、ほぼ必ず「使える補助金・助成金はありますか」と聞かれます。制度は毎年のように名称や要件が変わるため、「去年調べた内容」のまま相談に来られる方も多く、結果として申請のタイミングを逃してしまうケースを何度も見てきました。
今日は、現時点(2026年10月)で押さえておきたい2つの制度の「締切」と「要件の変化」を整理します。
次の締切は10月30日です
旧IT導入補助金は、2026年度から「デジタル化・AI導入補助金」という名称になっています。通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠については、6次締切分の申請期限が2026年10月30日(金)17:00、交付決定は12月10日(木)の予定です。複数者連携デジタル化・AI導入枠の3次締切分も同じ10月30日です。これに続く7次締切分は12月1日(火)となっています(中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「事業スケジュール」より)。
この補助金で実務上いちばん大事なのは、申請者(私たち中小企業・小規模事業者側)が単独で申請できない点です。事務局に登録済みの「IT導入支援事業者」とパートナーシップを組んで、ツールの選定から申請書類の作成までを一緒に進める必要があります。つまり、締切の数週間前に動き出しても、ベンダー側の確認・見積・事務局への登録確認といった工程が間に合わない可能性があります。「どのツールを入れるか」を先に固めてから補助金を探すのではなく、導入したいツールが決まった時点で、すぐにIT導入支援事業者に相談するのが、遅れを防ぐ一番確実な順番です。
AI研修に使う助成金は、要件が厳しくなりました
私たちはAI研修事業も行っているため、研修費用に使える「人材開発支援助成金」の相談も多くいただきます。この制度は2026年8月3日の改正で、対象となる訓練の条件がはっきりと絞られました。
厚生労働省の資料によると、研修名に単に「AI」「DX」「GX」と入っているだけの訓練は、2026年8月3日以降に提出する職業訓練実施計画届からは助成対象外になります。さらに、事業展開等リスキリング支援コースでは受講回数の上限(1年度3回、うちeラーニングは1回まで)も設けられました。
これは「AI研修という名前であれば何でも通る」時代が終わったということです。助成金の対象にしたい場合は、研修内容が自社の具体的な業務や職務に直結しているかを、計画届を出す前に言葉にしておく必要があります。たとえば「生成AIの使い方を知る」という汎用的な内容ではなく、「接客記録の要約作業にGeminiを使う手順を習得する」のように、誰のどの業務が変わるのかまで落とし込んでおくと、審査の説明がしやすくなります。これは助成金の話に限らず、研修そのものの効果を測るうえでも同じことが言えると、私たちは研修の現場で感じています。
制度は「締切」から逆算して動く
どちらの制度にも共通しているのは、要件そのものよりも「相談を始めるタイミング」で差がつくという点です。締切の直前に情報を集め始めると、パートナー探しや書類確認の工程が圧縮されて、結局は見送りになりがちです。
私たちが店舗運営(熊猫商店)やお客様支援の中で意識しているのは、ツールや研修の導入を決めた段階で、同時に「この投資に使える制度はあるか」を確認する動きを習慣にすることです。制度活用そのものは目的ではありません。そこで浮いたコストや時間を、本来やりたかった改善にどう使うかが本題だと考えています。
今回の内容は、2026年10月時点で公開されている公募要領・事業スケジュール・厚生労働省の改正資料に基づいています。申請枠や金額の詳細は個別の事情によって変わるため、実際の申請前には必ず最新の公募要領と、登録されたIT導入支援事業者・社会保険労務士など専門家への確認をお願いします。