
業務を見直したあとの振り返りミーティングで、私たちは必ず「楽になりましたか」と聞いています。ただ、この聞き方には一つ弱点があります。「楽」という言葉には、作業がらくになったという意味と、仕事そのものが楽しくなったという意味の、まったく別の2つが混ざっているからです。
一つの質問に二つの答えが隠れている
社是「Let's 縁楽(en-joy)」では、この2つを意識的に「らく」と「たのしさ」に分けています。仕事がスマートになるらくと、働くことが楽しくなるたのしさは、原因も対策も別物です。
ところが振り返りの場で「どうでしたか」とだけ聞くと、社員はどちらかの気持ちだけを答えてしまいます。たとえば作業時間が半分になった仕組みに対して「楽になりました」と答えた社員が、実は「手順が減って早く終わるけれど、前より一人で黙々とやる時間が増えて寂しい」と思っていることがあります。この後半部分は、同じ質問の中では出てきません。
熊猫商店で実際に起きたこと
熊猫商店で、注文を受けてから提供までの確認作業を1つのチェックリストにまとめたことがあります。作業時間は明らかに短くなり、ミスも減りました。「楽になったか」と聞けば、答えは間違いなく「はい」です。
ただ、しばらくして気づいたのは、チェックリストに沿って一人で確認を終える流れになったことで、以前は確認のたびに発生していたスタッフ同士の「これどう思う?」という会話が減っていたことでした。効率は上がったのに、現場の雰囲気が少し静かになっていたのです。これは「らくになったか」では拾えても、「たのしくなったか」では拾えない変化でした。
振り返りの質問を2つに分ける
この経験から、私たちは振り返りの質問を次のように分けるようにしています。
- らく: 作業の手間や時間は減りましたか。迷う場面は減りましたか。
- たのしさ: この仕事をしていて、前より話す機会や裁量は増えましたか、減りましたか。
2つを同時に聞くと、社員は答えやすい方だけを答えてしまう傾向があります。順番に、別の質問として聞くことで、「らくになったけれど、たのしさは減った」という組み合わせの答えも出てくるようになりました。
答えが割れたときにどうするか
「らく」と「たのしさ」の答えが割れたとき、私たちはすぐに仕組みを元に戻すことはしません。まず、その仕組みで生まれた時間や余裕を、誰かと話す場に意図的に戻すところから試しています。熊猫商店では、チェックリストはそのまま残しつつ、確認作業の後に短い声かけを一つ加えるようにしました。効率化そのものをやめるのではなく、効率化で浮いたものを人との関わりに使う、という順番です。
振り返りは「うまくいったか」を確認する場ではなく、「何が減って、何が増えたか」を具体的に言葉にする場だと捉えています。質問を分けるだけで、次に手を付ける場所がはっきり見えてきます。