
飲食店やサービス業の現場向けにAI研修を行うとき、受講者の多くは「パソコンは苦手」「AIは自分には関係ない」と感じています。この状態で機能の説明から入ると、最初の10分で気持ちが離れてしまいます。私たちの研修では、最初の1時間を「自分の店の料理の説明文を作る」ことに使っています。
最初の体験が、その後を決める
慣れていない方ほど、最初の体験が「自分にもできた」であることが大切です。そのためには、題材が自分の仕事に近く、結果の良し悪しを自分で判断できるものである必要があります。
料理の説明文はこの条件にぴったりです。毎日作っている料理のことなら、出てきた文章が合っているか、言い過ぎていないかを、受講者本人が一番正しく判断できます。講師より受講者のほうが詳しい題材を選ぶ、というのがコツです。
1時間の流れ
- 10分:料理をひとつ選び、特徴を口で説明する。「スープはあっさりで、麺は細め。おすすめは背脂多め」。この口頭の説明がそのまま入力文になります。打つのが苦手な方は音声入力でも構いません。
- 20分:AIに説明文を作ってもらい、直す。出てきた文章を読んで、「うちの店はこんな言い方しない」「ここは言い過ぎ」と直していきます。この「直す」作業こそが、AIとの付き合い方の本体です。
- 20分:使い道を3つ考える。メニューの一言説明、SNSの投稿文、新しいアルバイトに渡す説明メモ。同じ文章が複数の場面で使えることに気づくと、応用の幅が一気に広がります。
- 10分:隣の人と交換して読む。他の人の説明文を読むと、自分の店の言い回しの「らしさ」が見えてきます。ここで出た感想が、そのまま次回の教材になります。
この1時間で、受講者は「入力する」「直す」「使い道を考える」という生成AI活用の基本動作を、自分の仕事の言葉で一巡しています。
なぜ現場は「書く仕事」から始めるのか
別の記事では、事務職の方には「読む仕事」から任せることを勧めました。現場スタッフの場合は逆で、「書く仕事」から始めるほうがうまくいくと感じています。現場の方は日々、お客様に料理や商品を言葉で説明しています。その言葉を文字にする作業は、まさに本人の得意分野だからです。
自社のラーメン店「熊猫商店」でも、メニューの説明文や季節の案内文は、こうしてスタッフと一緒に作ることがあります。本人の言葉が入った説明文は、お客様にも伝わります。
その先に広げること
最初の1時間がうまくいくと、次の回では「予約のお礼メッセージ」「アルバイト募集の文章」「仕入れ先への連絡」と、現場の書き仕事に広がっていきます。そこまで来れば、業務の棚卸しや定着の仕組みといった、会社全体の取り組みにつなげる段階です。
研修は、立派な資料より「自分にもできた」の積み重ねで前に進みます。飲食・サービス業の現場に合わせた研修の進め方は DX・AI研修 にまとめています。