
私たちのAI研修(DX・AI研修)では、初回の講義より前に、受講者の皆さんへひとつ宿題を出しています。「業務棚卸しシート」です。生成AIの画面を開く前に、まず自分の1週間の仕事を書き出していただきます。地味な作業ですが、研修が現場で生きるかどうかは、ここでほとんど決まると考えています。
なぜ最初に棚卸しなのか
ツールの使い方から入る研修は、その場では盛り上がります。ところが翌週になると「結局、どの仕事で使えばいいのか分からない」という声が出てきます。使い方を知っていても、当てはめる先が見えていないからです。
棚卸しシートは、この「当てはめる先」を先に見つけるためのものです。業務を書き出してみると、同じ作業の繰り返し、毎回ゼロから文章を書いている仕事、確認待ちで止まっている時間が、本人にも見えてきます。AIに任せる候補は、ツールの機能一覧ではなく、この一覧の中にあります。
シートの項目はこの5つ
難しい様式は要りません。私たちが使っているのは次の5列です。
- 業務名:「見積書を作る」「シフト希望をまとめる」のように、動詞で終わる短い名前にします。
- 頻度と所要時間:週に何回、1回あたり何分か。感覚値で構いません。
- インプットとアウトプット:何を見て始め、何ができたら終わりか。
- 困っていること:時間がかかる、間違えやすい、人によってばらつく、など。
- 判断の有無:決まった手順だけで終わるか、途中で誰かの判断が入るか。
5つ目の「判断の有無」が、AIに任せやすい仕事と、人が握るべき仕事を分ける目印になります。手順が決まっていて判断が入らない仕事ほど、最初の一歩に向いています。
提出されたシートで見る3つのポイント
講師側は、提出されたシートを次の3点で読みます。
- 「文章を書く」仕事がどれだけあるか。メールの返信、報告書、案内文、求人票。生成AIが最初に力を発揮するのはここです。
- 同じ情報を2回以上入力している箇所。紙に書いてから表計算に打ち直す、チャットで聞いてから台帳に転記する。AIというより仕組みの見直しで解決することも多く、研修の範囲を超えて相談に乗る入口になります。
- 本人が「困っていない」と書いた定型作業。慣れすぎて困り事だと気づいていない仕事に、いちばん大きな余白が眠っていることがあります。
この3点をもとに、研修の演習題材を受講者ごとに差し替えます。架空の例題ではなく、自分の仕事がそのまま教材になるので、翌日から試せます。
棚卸しは研修後も効く
シートは研修が終わったら捨てずに、月に一度見直していただいています。「AIに任せた」「やめた」「まだ手でやっている」と印をつけていくと、半年後には自分たちの変化が一覧で見えます。
私たちも自社のラーメン店「熊猫商店」で同じ考え方を使い、日報のまとめなど定型の書き仕事から少しずつAIに寄せています。効率化はゴールではなく、生まれた余白を何に使うかが本題です。棚卸しシートは、その余白を見つけるための最初の一枚だと考えています。
研修の全体像は DX・AI研修 のページにまとめています。